2023年1月5日
室蘭工業大学長 空閑 良壽
教職員の皆さま、明けましておめでとうございます。
年末年始の8日間のお正月休みの間、リフレッシュされて、2023年を迎えられたことと思います。
令和4年7月に策定した学長ビジョンでも謳っているように、本学は昨年から始まった第4期の中期目標・計画期間(6年間)で、大学院での教育・研究の改革・充実を目指しています。本学は「確かな研究力をベースとした教育力」を特長として、国立の工業大学として高度な理工系人材を育てていくことは、本学の重要な使命であります。
ここで言う高度な理工系人材とは、大学院博士前期課程修了生のことであり、大学院教育の充実は必須の課題です。本年は最初の理工学部卒業生が誕生し、大学院へ進学する重要な年でもあります。
大学院においては、本学の伝統と歴史に基づいた「理工学の専門分野」に「最新の情報技術力」がかけ合わさった、いわゆる「専門」×「情報」が融合した分野の教育・研究の発展とその資質・能力を有する学生諸君を育てる大学院改革を進めています。進学希望の学生諸君からも、出口の産業界・社会からも魅力ある修了生を育てる大学院とし、第4期中に博士前期課程への進学率50%達成を学長ビジョンで掲げています。この意図は、本学に入学し大学生となった皆さんが、本学の大学院へ進学するのが普通の状態となる、そのようないわゆる「大学院大学」としての国立の工業大学としての存在価値を高めたいところにあります。一言で言えば、「同窓生が後輩に本学への進学を勧めたい大学・大学院」づくりを目指し、「企業・社会が採用したくなる高度理工系人材」を育てましょう。
さらに大学院博士後期課程に関しては、2021年度後半より次世代研究者挑戦的研究プログラムにより文部科学省の支援を得ることができ、優秀な博士後期課程学生諸君への経済的支援を強化し、研究・教育環境も含めた厚い支援体制を整えていくことが実現いたしました。この採択は道内大学では本学と北大のみです。さらには、国費留学生支援プログラム(すでに採択されていた「民間企業との包括連携を活用したPBL型AI教育プログラム」に加えて今回新たに「コンピュータ科学×専門分野でスマート社会を牽引するイノベーション人材育成プログラム」)も採択されていて、4期の中期計画にも書き込んだ「コンピュータ科学人材育成センター(仮称)」の設置と世界をリードする人材の育成を進めて行きたいと考えます。
加えて年末の教授会でも申し上げましたように、令和4年度の第2次補正予算で、総額約3000億円の「成長分野を牽引する大学・高専の機能強化に向けた基金による継続的支援」と、総額約2000億円の「地域中核・特色ある研究大学の振興」があります。国立大学全体の運営費交付金総額1兆1千億の総予算の、半分にも及びそうな大変大きな補正予算が文部科学省より示されています。とりわけ、最初の3000億円基金の方の、「高度情報専門人材の確保に向けた機能強化支援」の予算は、情報系専攻等を有する大学院の拡充・充実を促す予算であり、本学が現在目指している大学院教育研究の充実・改革と趣旨が大きく重なるものであります。是非、本予算の獲得に向けて、全力で本学の叡智を集結して臨みたいものです。教職員の皆様のご協力、よろしくお願いいたします。
本学の基礎となる理工学部では、本学の全学必修の数理・データサイエンス教育をベースとして、「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」の教育を実践しているところですが、今年はぜひもう一つ上の応用基礎レベルのプログラムへの申請とそのための実績づくりをお願いします。また、昨年9月に竣工した新装図書館を、教育・研究面のデジタルトランスフォーメーション(DX)の象徴としてその機能を充実させ、本学のデジタルキャンパス化も進めてまいりたいと考えます。
本学の「確かな研究力」の裏付けの一つとして、「大学ランキング」の積極的活用を行なっています。年末の教授会でもご紹介しましたように、世界大学ランキングの代表的なものである、Times Higher Education (THE)の世界大学ランキングやQSアジア大学ランキングへの継続的ランクインは、道内では本学と北海道大学の2大学のみであり、本学の継続的な研究力の強さのエビデンスの一つです。さらには、朝日新聞出版社の大学ランキング2023年度版では、コンピュータ科学分野における論文被引用度が5年連続で、全国1位、2位を競っています。また同窓生の活躍例として、技術士と一級建築士合格者数はそれぞれ国立工業系大学では全国3位と4位と好成績であり、このような一連のランキングを、本学志願者などをターゲットとした本学の大学ランキング2023年版ポスターにまとめてアピールしています。同窓生といえば、本学の同窓生でもあるシステム理化学科の神田康晴先生が、今年度の北海道科学技術奨励賞に輝く嬉しいニュースも12月23日に発表されました。大学ランキングポスターは、東京事務所の樋口先生はすでに大いに活用していますが、皆様もご活用ください。
また昨年に引き続き、本学入学志願者の偏差値の推移を調べてみますと、直近の10年程度の本学のトレンドを見てみますと(ベネッセの6月期の模試からのデータ)、もちろん年度によって多少のでこぼこはありますが、前期日程・後期日程志願者のそれのいずれも、おおむね少しづつではありますが、嬉しいことに右肩上がりの上昇傾向を維持していますし、偏差値のみならず志願倍率自体も、平成21年の4学科改組以来、理工学部への改組を経ても、概ね、右肩あがりの傾向です。この偏差値などの上昇傾向に留まらず、真に入学志願者となる学生諸君にとって、魅力ある大学に是非ともなりたいものです。
つづきまして、本学のもうひとつの重点事項、社会との共創に関しては、北海道地域のMONOづくり、価値づくりに貢献していくため、企業や自治体とのより幅広い連携を目指した包括連携体制の強化を進めています。例えば、大樹町では本学のサテライトオフィスが稼働中であり、さらにはインターステラテクノロジズ社との共同研究体制も強化し、本学内にもインターステラテクノロジズ社がアライアンスラボを稼働させ、地域への教育貢献や共同研究を加速させています。また三笠市との包括連携に関しても、板倉賢一特任教授を中心とした炭酸ガスの固定化・カーボンニュートラルへの発展を目指した共同研究も強化・進行中です。また、嬉しいことに、JSTの2022共創の場プロジェクト「アシル-トイタによる⼼と体に響く新しい⾷の価値共創拠点」事業をクリエイティブコラボセンター長の徳楽清孝先生をプロジェクトリーダーとした事業、の採択を受け、「本学の確かな研究力を活かして、北海道そして白糠町の基幹産業である食産業に、本学や参画企業のサイエンス・テクノロジー、アイヌの先人たちの知恵を活かした起こす事業」を開始しました。
また、年末の12月23日の夜、リンコムで本学経営企画課の堀切さんより、嬉しいニュース、クリスマスプレゼントが届きましたMONOづくりみらい共創機構(仮称)として改組改編して、さらに機能強化する組織整備費を令和5年度予算として獲得することができました。実はこれは本学とって大変大きなことであり、本学では2004年の法人化以降、初めて実現しました。本学の組織、教職員を拡充できる予算です。担当理事の船水先生、事務局経営企画課から学長補佐として尽力いただいた郷路次長、そして経営企画課、研究協力課の皆さんをはじめとした事務局の皆様、大変ご苦労様でした。もちろん、これからの実質化が予算獲得以上に重要です。
北海道の少子高齢化と過疎化等に端を発する様々な課題は、日本全体、さらには世界共通の課題につながるものであり、本学はその課題解決・社会との共創を目指す計画を、本学の新しいMONOづくりみらい共創機構(仮称)の稼働により、実現していきましょう。
またそのほか、令和5年度予算の基盤的設備等整備分で建築の濱先生グループの「地産地消エネルギーと社会基盤材料のカーボンリサイクル評価システム」が採択されました。また施設整備の2次補正でライフライン再生(防災設備等)の予算もつきました。担当理事の佐藤先生、施設課の皆様、ご苦労様でした。
さて、最後になりますが、2023年も教職員の皆様、そして執行部一丸となって、室蘭工業大学のさらなる発展に向けて頑張りましょう。
以上、私からの2023年の年頭のご挨拶とさせていただきます。