入学宣誓式 告辞

令和5年4月5日
室蘭工業大学長 空閑良壽

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。長年にわたり勉学の環境を整えられ、本人たちの努力を支えてこられたご家族ならび関係者の方々にも、心から敬意とご祝辞を申し上げます。

 今年度は新型コロナウイルス感染症対策の影響で学部と大学院を分けた入学宣誓式となりました。理工学部及び大学院入学の皆さん、そして晴れ舞台となる入学宣誓式を心待ちにされていた、ご家族をはじめ関係者の皆さんにも4年ぶりにご出席いただくことが実現し、大変嬉しく思います。

 本年度入学者は、理工学部学士課程の635名、編入学生43名、大学院博士前期課程239名、博士後期課程9名、合わせて926名の皆さんです。今年はコロナ禍での影響も大きかったと推察されますように、海外からの留学生は学部に16名、大学院は18名、合わせて34名とコロナの影響が殆どなかった3年前の52名と比べるとやや少ない人数となっています。

 本年度の理工学部(昼間コース)4月入学者の一般入試の志願倍率は、手元にデータがある過去20年間の中で最高の倍率となりました。詳しい分析はこれからですが、道外志願者の増加が大きなドライビングフォースとなっています。入学生の皆さんの出身高校から見た道内外の比率も、今年は道外比率が過去最高で40%を初めて超えて43.4%となり、また高知県、島根県、長崎県を除く、44都道府県という全国各地から入学いただいています。また、学部入学者中の日本人の女子学生の皆さんの人数も初めて100名(昼間98、夜間主2)、16.1%に達し、過去最高の数字となっています。

 なお、本学の留学生の諸君の総数はこの4月で169名となっており、教室に、研究室に、大学のキャンパスのあちこちにグローバルなダイバーシティにあふれた環境を有する大学となっています。

 さて本日は、現在本学が取り組んでいる教育改革などホットなニュース、そして皆さんが本学在学中にどのようなことを心がけるべきか、身につけるべきかについて、私からの期待を述べさせていただきたいと思います。

 本学は北海道、室蘭に位置する国立の工業大学として、北海道の課題解決は、日本の、さらには世界の課題の解決につながると考えて、教育改革・大学改革に取り組んでいます。理工学部においては、ICTやAIの本質を理解して使いこなし、もの・価値づくりに貢献できる学生諸君を育てる工業大学ならではの情報教育を推進しています。全学必修の手厚い情報教育を行うことで、令和3年度には文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」(DS)の認定を得ています。また昨年10月には、本学の図書館が大改修・増築を終え、本学での教育のDXの象徴として新装オープンしています。自慢の図書館ですので、皆さん是非、大いに活用して、積極的に勉強に、そして学生諸君のコミュニケーションの場としてご利用ください。

 さて、皆さんはどのような目標・目的をもって室蘭工業大学に入学されたことでしょうか?

 毎年申し上げていることですが、学部入学の皆さんはこれから貴重な4年間、大学院博士前期課程、後期課程の皆さんはそれぞれ貴重な2年間、3年間を是非とも有効に使ってください。本学で大いに学び、伸びしろを大きく大きく作りましょう。本学は、国立の工業大学ならではの情報技術を全ての学生諸君に身につけることができるようにカリキュラムを用意しております。そこでは本学の優秀な教授陣が書き下ろしの教科書を作成して皆さんをお待ちしております。皆さんが自ら確保した貴重な時間の計画と夢を持って、activeに授業に臨んでください。

 大学院博士前期課程においても、情報系の共通の必修科目、そしてコースごとにその特徴を活かした情報科目の充実を目指した改革を行なっています。

 さて、学校推薦型選抜入試や総合型選抜入試で入学した皆さんには、入学前学習の勧めの際に、すでに申し上げておりますように、大学での充実した4年間のキャンパスライフとするために、最も重要なことは、「ものごと何でも最初が肝心」、スタートダッシュが大事ということです。最初の1年を順調に乗り切ると、残り3年間も安定した学生生活を送ることができる確率が大幅に高くなります。これは統計的なevidenceに基づいた確かな話です。入学時から卒業時にいたるまでの皆さんの大学での成績を統計的に見てみると、本学に限らず、実は入学試験そのものの成績と卒業時の成績にはあまり相関はありません。ところが、1年終了時の成績と卒業時の成績にはかなり強い相関があります。1年生の時から自分のこれまでの人生を振り返り、その上で4年間の学生生活の目標をぜひ設定し、達成するための計画を立てて臨んでください。学生時代は、まじめに、真摯に取り組む姿勢、心構え、すなわち努力する姿勢が大変重要です。

 また、これは先月の学位記授与式でも述べましたように、私は本学の強みは、「確かな研究力をベースとした教育力」にあると強く信じています。「確かな研究力」というのは、世界に通用する、すなわち世界水準の研究力ということです。主に研究力の観点から、THEの世界大学ランキングには、国立大学は57校がランクインし、本学は5年連続のランクイン(1501+位)となりました(2022.10発表)。さらには、QSアジア大学ランキングにおいても、本学は2年連続でランクイン(451~500位)しました(2022.11発表)。この2つ世界の代表的大学ランキングにランクインしている大学は、道内では本学と北海道大学の2大学のみであり、本学教員の研究力が光っています。また本学卒業生の企業からの評価も高く、企業の人事担当者から見た大学イメージ調査においては、北海道内の大学で第3位となっています(日経HR2023版)。自分の子どもに入学してほしい大学ランキング、北海道・東北地域で第5位。(朝日新聞出版「AERAムック」大学ランキング2023)まさに、エビデンスに基づいた「確かな研究力をベースとした教育力」の成果のひとつだと考えます。

 皆さんは、本学に日本1、2位を競う研究分野があることをご存知ですか? 本学は、朝日新聞出版社の大学ランキング(2019~2023年度版)によるとコンピュータ科学分野の論文1報あたりの被引用指数(他の研究者の参考となり論文の質が高いことになる)では、 5年連続で日本1、2位を競っています。 この素晴らしい研究力を活かすために、この4月から「コンピュータ科学センター」を設立し、世界トップレベルの研究をスタートさせました。センター長は最近4年間で3回も世界の情報系でHighly Cited Researcher(発表した論文が他の研究者から高く引用されている、参考とされている研究者ということで、世界的論文データベースの分析リーダーカンパニーの一つであるクラリベイト社が選出しているもので、情報系では日本からは年間3、4人しか選ばれていません)、これに選出されている、若手の女性の太田香教授です。皆さんも大いにご期待ください。

 さて皆さんは理工系の国立大学と私立大学の大きな違いはどこにあるかご存じでしょうか?

 本学も含めて理工系における国立大学の大きな特徴は、教員の優れた研究力を活かした大学院教育の充実にあります。我が室蘭工業大学大学院においても、この度は、博士前期課程に239名、後期課程に9名の新入生を迎えました。私は、博士前期課程入学者が300人を超え、学部卒業生の50%以上が本学大学院に進む状況、すなわち、室蘭工業大学に入学した学生諸君は、本学の大学院博士前期課程(修士課程)へ進学するのが当たり前、普通となるような大学院大学を目指したいと強く願っています。学長としましては、先ほどから述べておりますように、本学教員の「確かな研究力」、すなわち、「世界水準の研究力に基づいた教育力」により、一層の大学院教育の充実を図り、そこで学ぶ学生諸君からも、優れた人材を求める企業、産業界からも魅力ある大学院教育を目指しています。

 博士後期課程においては、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の次世代研究者挑戦的研究プログラムの採択を得て、学生諸君の経済的支援や研究支援を大きく充実させています。このプログラムの採択も北海道内では本学と北海道大学のみとなっており、分野トップレベルの本学コンピュータ科学分野と、建築土木、機械航空、電気電子、物理、化学、生物など様々な科学技術分野との2つの分野を両輪とした異分野融合型の人材育成を加速させています。この、いわば、専門×情報という分野融合型の高度な理工系人材の育成は、本学においては、理工学部、大学院博士前期課程、後期課程を通じた、一貫した育成方針となっています。

 本日、本学に入学された皆さんぜひ、我々室蘭工業大学の教員の研究力・教育力の優れたところを吸収して、世界で活躍する高度理工系人材の一員として育ってください。理工学部に入学したばかりの新入生には少々、気が早すぎるかもしれませんが、是非、本学の魅力ある大学院への進学も考慮に入れて、本学での学びを頑張ってください。以上、新入生の皆さんに私からの大学生活での心構えと期待を述べさせていただき、入学宣誓式の告辞とさせていただきます。