入学宣誓式 告辞

令和4年4月5日
室蘭工業大学長 空閑良壽

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。長年にわたり勉学の環境を整えられ、本人たちの努力を支えてこられたご家族ならび関係者の方々にも、心から敬意とご祝辞を申し上げます。

 今年度は新型コロナウイルス感染症対策の影響で3回に分けた入学宣誓式となりました。理工学部そして大学院入学の皆さんの晴れ舞台となる入学宣誓式を心待ちにされていたご両親、ご家族を初め関係者の皆さんにもご出席いただくことは叶わず、心よりお詫び申し上げます。

 本年度入学者は、理工学部学士課程の624名、編入学生46名、大学院博士前期課程250名、博士後期課程8名、合わせて928名の皆さんです。今年はコロナ禍での影響も大きかったと推察されますように、海外からの留学生は学部に13名、大学院は23名、合わせて36名とコロナの影響が殆どなかった一昨年の52名と比べるとやや少ない人数となっています。ただし、理工学部学士課程入学者624名中、海外からは3ヶ国、13名(2.1%)、日本人学生の出身地は38都道府県に及んでいて、道外からの入学生は202名(32.4%)、道内からは409名(65.5%)となっており、たいへん幅広い地域から入学いただいております。また、本学の留学生の諸君の総数はこの4月で214名と、コロナの影響が殆どなく、過去最高であった一昨年(215名)とほぼ同人数となっており、教室に、研究室に、大学のキャンパスのあちこちにグローバルなダイバーシティにあふれた環境を有する大学となっています。

 さて本日は、現在本学が取り組んでいる教育改革などホットなニュース、そして皆さんが本学在学中にどのようなことを心がけるべきか、身につけるべきかについて、私からの期待を述べさせていただきたいと思います。

 国立大学はこの4月より、6年タームの第4期中期目標期間がスタートしたところです。本学は全国にある86の国立大学の一員として、「地域貢献」を大きなキーワードとして掲げ、北海道の課題解決は、日本の、さらには世界の課題の解決につながると考えて、教育改革・大学改革に取り組んでいます。4年目となる理工学部においては、ICTやAIの本質を理解して使いこなし、もの・価値づくりに貢献できる学生諸君を育てる工業大学ならではの情報教育を推進しています。全学必修の手厚い情報教育を行うことで、昨年度には文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」(DS)の認定を得ています。

 学部入学生の諸君はまず、講義棟での学びが始まります。講義棟のメインであるN棟は、2年前の全面改修を経て、学生諸君が積極的に自発的に授業に取り組むことができる、アクティブラーニングの手法を十分に活用できる教室が多く整っていますし、学習のための設備も充実させています。本学のもう一つの学びの中心である図書館も本年10月には大改修・増築が完成します。本学での教育のデジタルトランスフォーメーション(DX)の象徴となる新しい図書館で、大いに勉強してください。

 さて、皆さんはどのような目標・目的をもって室蘭工業大学に入学されたことでしょうか?

 学部入学の皆さんはこれから貴重な4年間、大学院博士前期課程、後期課程の皆さんはそれぞれ貴重な2年間、3年間を是非とも有効に使ってください。本学で大いに学び、伸びしろを大きく大きく作りましょう。本学で、まずは幅広い理工学の基礎、工学と科学の専門基礎知識を学びましょう。そして、先ほども述べた文部科学省から認定を得た「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」(DS)では、工業大学ならではの情報技術を全ての学生諸君に身につけることができるようにカリキュラムを用意しております。北海道の国立大学では本学と北海道大学のみがDS認証を受けていて、そこでは本学の優秀な教授陣が書き下ろしの教科書を作成して皆さんをお待ちしております。まずは、AIや情報科学の本質を理解し、国立工業大学の卒業生として必要十分な基礎知識を身につけた科学技術者を育てたいと考えています。これに応えるよう、皆さんも頑張って学んでください。皆さんが自ら確保した貴重な時間の計画と夢を持って、activeに授業に臨んでください。

 しかしながらこの度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、通常の教室での対面授業や演習・実験に加えて、一部の授業ではオンラインサービスを利用したリモート環境での授業の実施も想定しており、いわゆるハイブリッド型の授業スタイルとなります。我々教職員も、このような環境下で最大の授業効果を得られるように奮闘中であります。学生諸君の皆さんにも、通常の教室での対面授業以上に、学生諸君が自ら、積極的に集中して、授業に取り組んでいただく必要があります。私たち教職員も全力でサポートいたしますが、勉強するかしないか、これからの学生生活が上手くいくかどうかは、皆さんの対応・心がけにかかっていることは言うまでもありません。

 昨年の暮れ、低コストロケット開発で本学と包括連携協定を結んで共同研究を行っているインターステラテクノロジズ社の稲川社長を招いて、本学の蘭岳セミナーで学生諸君への講演会を開催しました。その際にも稲川社長は、「学生時代はもっともっと夢を持ってたくさん勉強してください」と盛んに時間の重要性と実践的学びの重要性を学生諸君に説いていました。私も含めて社会人になってしまうと、誰しも仕事と時間に追われて、学生時代の恵まれた時間を思い出します。もう少し、しっかりと勉強すれば良かったと後悔する時が多々あります。

 とりわけコロナ禍でのリモートやハイブリッドスタイルの授業環境では、「自ら大人の大学生として」、真摯に学習に取り組む姿勢が問われることになります。皆さん18歳以上の「大人としての大学生の学び」とは、勉強しなさいと言われて学ぶのではなく、自らその必要性を十分に理解して能動的に、主体的に、自己責任の下、学ぶということです。是非、心に留めておいてください。

 さて、これは先月の学位記授与式でも述べましたように、私は本学の強みは、「確かな研究力をベースとした教育力」にあると強く信じています。「確かな研究力」というのは、世界に通用する、すなわち世界水準の研究力ということです。主に研究力の観点から、本学は2つの世界の代表的な大学ランキングにランクインしています。昨年6月に発表されたTimes Higher Education(THE)の世界大学ランキングには、国立大学は57校がランクインしており、本学は4年連続のランクイン(1201+位)となりました。昨年11月に発表されたQSアジア大学ランキングにおいても、本学は初めて401〜450位にランクインしました。また本学卒業生の企業からの評価も高く、企業の人事担当者から見た大学イメージ調査においては、北海道内の大学で第3位となっています(日経HR2022版)。さらに、この3月末に発表になったばかりの、THEの世界大学ランキング日本版(主に教育力をその指標としている)においては、日本で111-120位にランクインしていて、昨年の131-140位から2ランクアップしました。この2022年度版においては、本学は、学生諸君への教育充実度や高校教員からの評判調査の結果が昨年よりも大きく向上していました。このような結果は、まさに、エビデンスに基づいた「確かな研究力をベースとした教育力」の成果の表れだと考えます。

 皆さんは、本学に日本1、2位を競う研究分野があることをご存知ですか? 本学は、朝日新聞出版社の大学ランキング(2019〜2022年度版)によるとコンピュータ科学分野の論文1報あたりの被引用指数(他の研究者の参考となり論文の質が高いことになる)では、 4年連続で日本1、2位を競っています。 繰り返しとなりますが、このようなevidence に基づいた本学教授陣の裏付けのある「確かな研究力をベースとした教育力」こそ、本学の実績であり強みです。

 さて最後になりますが、本学が目指している大学院充実の話をさせていただきます。皆さんは理工系の国立大学と私立大学の大きな違いはどこにあるかご存じでしょうか。本学も含めて理工系における国立大学の大きな特徴は、教員の優れた研究力を活かした大学院教育の充実にあります。我が室蘭工業大学大学院においても、この度は、博士前期課程に250名、後期課程に8名の新入生を迎えました。私は、博士前期課程入学者が300人を超え、学部卒業生の50%以上が本学大学院に進む状況、すなわち、室蘭工業大学に入学した学生諸君は、本学の大学院博士前期課程(修士課程)へ進学するのが当たり前、普通となるような大学院大学を目指したいと強く願っています。学長としましては、先ほどから述べておりますように、本学教員の「確かな研究力」、すなわち、「世界水準の研究力に基づいた教育力」により、一層の大学院教育の充実を図り、そこで学ぶ学生諸君からも、優れた人材を求める企業、産業界からも魅力ある大学院教育を目指します。

 博士後期課程においては、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の次世代研究者挑戦的研究プログラムの採択を得て、学生諸君の経済的支援や研究支援を大きく充実させているところです。このプログラムの採択も北海道内では本学と北海道大学のみとなっており、分野トップレベルの本学コンピュータ科学分野と、建築土木、機械航空、電気電子、物理、化学、生物など様々な科学技術分野との2つの分野を両輪とした異分野融合型の人材育成を加速させてまいります。

 本日、本学に入学された皆さんぜひ、我々室蘭工業大学の教員の研究力・教育力の優れたところを吸収して、世界で活躍する高度理工系人材の一員として育ってください。理工学部に入学したばかりの新入生には少々、気が早すぎるかもしれませんが、是非、本学の魅力ある大学院への進学も考慮に入れて、本学での学びを頑張ってください。以上、新入生の皆さんに私からの大学生活での心構えと期待を述べさせていただき、入学宣誓式の告辞とさせていただきます。