学位記授与式 告辞

今年度は新型コロナウイルス感染症対策の影響で3回に分けた学位記授与式となりました。学部卒業生、大学院修了生の皆様の、卒業・修了の晴れ舞台となる学位記授与式を心待ちにされていたご両親、ご家族を初め関係者の皆様にご出席いただくことは叶わず、心よりお詫び申し上げます。

さて本日、晴れて学部を卒業し学士(工学)の学位を得られた方は627名、大学院博士前期課程を修了し修士(工学)の学位を取得された方は245名、また大学院博士後期課程を修了し博士(工学)の学位を授与された方は18名です。そして卒業生・修了生の中には外国人留学生が34名おられます。これら890名の皆さんに、学位の取得並びに卒業・修了を心からお祝い申し上げます。また皆さんの入学から今日まで、修学を励まし支えてこられたご家族並びに関係者の方々に敬意とご祝辞を申し上げます。学位記授与に当たり、卒業生・修了生の皆さんに、私からの期待とメッセージを述べさせていただきます。

昨年の年頭から始まった新型コロナウイルス感染症との戦いは、まだその終わりは見えません。それでも、日本そして世界の株価はおおむね好調を維持し、日本そして世界の経済も様々な対応策と施策により落ち着いております。しかし、実態はかなり厳しく、非常に不安定な状況と考えられますが、世界中の皆様とともに、長いトンネルを抜けるよう、現在が頑張りどころではないでしょうか。一方、学部生そして博士前期課程修了生の皆さんの就職状況は、就職活動が制限されてしまった影響もあってか、昨年までに比べると数ポイント低い状況で進んでしまいました。

さて、皆さんは大学という社会からプロテクトされた環境から、社会・産業界の先が見えにくい荒波のなかに旅立つことになります。十分な覚悟と準備が整っているでしょうか。今、世界が直面している新型コロナウイルス感染症への対応をとっても、ワクチン接種にこぎつけ明かりが見えてきたように思えますが、どのような手段・対策が正解なのか、そもそもどのような「解」があるかわからない問題です。このような問題・課題に直面し、その「解」を見つけ出そうと皆、頑張っているところです。

学生諸君自身も、既に1年以上に渡って新型コロナウイルス対策下の状況で、授業、卒業研究、修士論文、博士論文の研究を進めてこられました。リモートでの授業や指導教員の先生とのディスカッション、そして研究室での実験やグループワークなど、これまでの大学での学びのスタイルとは異なる、新たな環境のなかで、大変な努力とこの度の制限がかかった状況での、卒業研究や大学院での研究課題に取り組んだ経験は、皆さんにとって、きっと大変貴重な経験となってかえってきます。答えがあるかどうかわからない問題・課題と立ち向かい、答えに近づく、チャレンジすることはとても勇気がいることです。なぜなら、もし答えにたどり着けなければ、あるいはどんなに頑張っても、そもそも答えがないかもしれないという不安に打ち勝つのはまさに容易なことではありません。このようなとき、どのように対処されたことでしょうか?皆さんのこの経験を思い出してください。

さて私は本学の強みは、「確かな研究力をベースとした教育力」にあると強く信じています。例えば本学のホームページでも取り上げていますように、ロンドンに拠点を置く Times Higher Education(THE)の世界大学ランキング(「研究力」を主な指標として、Teaching、 Research、Citations、Industry Income、 International Outlook の4つの観点から評価される)に3年連続のランクイン(1001+位)、Engineering部門では601〜800位となり、国立工業系大学のなかでは東京工大についで、九州工大と東京農工大と同じく2位グループとなりました。これは単に評価の一つの切り口ではありますが、大変素晴らしいことです。 加えて、コンピュータ科学分野の論文被引用指数は、なんと3年連続で日本一に輝いています。さらには、工学分野でも日本で第2位という快挙です(朝日新聞出版:大学ランキング2019〜2021年度版)。

学生諸君の頑張りも素晴らしく、つい最近の報道でもありましたように、学生諸君も開発に携わった人工衛星「ひろがり」の打ち上げ成功がありました。まさに研究に携わった学生諸君や教員の皆さんの夢が宇宙に打ち上がったわけで、宇宙空間での実験成功を心より期待しています。またこの打ち上げには、一般の皆さんにも協力いただいたクラウドファンディングの資金も投入されています。まさに、エビデンスに基づいた「確かな研究力をベースとした教育力」の成果のひとつだと考えます。

さて人生の先輩の一人として、私からもう一つ、大事な言葉を贈りましょう。それは「攻めと守りのバランス感覚」です。大学執行部の仕事も副学長が6年、学長としても6年が経過します。その間、様々な計画・施策の実施に携わってきました。この間、私は極力、EBPM (Evidence Based Policy Making)を心がけていました。大学運営において、確かなエビデンスが示せて、プラスになる成果や実現可能を期待できる計画ができれば、教職員の皆さんの協力を期待できることになります。ただ、解決すべき課題が多すぎたり、十分な検討時間がとれない場合、常に十分なエビデンスを用意できるとは限りません。その際には、少ないエビデンスから判断して決断をすることになります。このときに、保守的に行くか積極的にでるか、「攻めと守りのバランス感覚」が重要となります。最近はそのことの重要性を感じています。

また本学で皆さんは各自の専門分野を学び、それぞれの学位を取得されたわけですが、学びはまだ終わっていません。皆さんは、これまで学んだ20数年間の何倍も長い期間、社会を生き抜き、切磋琢磨して行くことになります。私は鞄の中には、いつも学長宿題というファイルが入っていて、常に予習・復習を行っています。人生100年時代、まだまだ勉強です。皆さんも、本学で身につけた専門分野を一つのベースとして、社会で活躍するために、さらに専門を深めたり、あるいは幅を拡げ、新たな先端分野を学んだり、社会・産業の状況に応じて学び続けて、これからの人生を有意義に過ごすための準備をしてほしいと思います。

冒頭で述べたように外国人留学生の皆さんに関して、34名が学部卒業・大学院を修了します。そのうち帰国する留学生諸君はわずか12名(35%)、残りの22名は日本で活躍されると聞いています。すでに2名は国内企業に就職、さらに1名は本学の博士研究員として残ります。このように留学生諸君の母国での活躍に加えて、日本国内の大学や企業で活躍する学生諸君が増えてきていることは大変頼もしい限りです。今後とも本学での学びを活かして、これまで以上に日本や本学と関わっていただけるよう期待いたします。

最後になりますが、皆さんの周りにはたくさんの応援団、仲間がいます。

本学の同窓生は皆さんも加えると既に述べ40000人に達しており、産業界・社会で実績を残して、活躍している先輩たちが皆さんを温かい目で見守っています。この歴史ある卒業生の社会での活躍とそこからの応援、そして室蘭工業大学で共に学んだ皆さんの経験こそが、これからの皆さんの力となります。

室蘭工業大学は、これからも皆さんと共に、日本のそして世界の輝かしい未来を築くべく、教育と研究そして社会への貢献を大きな柱として歩みます。皆様のご健勝とこれからの輝かしい未来でのご活躍を祈念し、学長告辞といたします。

令和3年3月23日
室蘭工業大学学長 空閑良壽