室工大ニュース

空閑良壽学長退任のご挨拶について

空閑良壽学長は、2015年4月からは国立大学法人室蘭工業大学学長として9年間、本学の運営に尽力いたしました。令和6年3月31日(日)をもって任期満了により退任しますので、ご挨拶申し上げます。

学長退任のご挨拶

私は2015年4月から学長を拝命しましたので、9年間、本学の長として大学運営に携わってきました。理事・副学長時代の6年間を加えますと執行部での仕事が15年間になり、まさに本日をもって、本学を卒業となりますので、本日はその振り返りをさせていただきながら、退任の挨拶とさせていただきたいと思います。

私は本学の特徴を、「確かな研究力をベースとした教育力」と表現しました。ここで言う「確かな研究力」というのはエビデンスに基づいた世界水準の研究力であり、世界のTOP50%論文誌に掲載された論文や世界中の研究者から参考に(引用)される論文として発表された研究成果に基づく力です。まず教育に関して振り返ると、学術担当理事時代(2014年4月)に、当時志願者減で苦戦していた大学院博士後期課程5専攻をひとつの工学専攻にまとめて定員減(24名から15名へ)を、博士前期課程は6専攻から3専攻にまとめ定員増(198名から226名)を行い、少なくとも大学院の安定的な志願者確保を実現させることができました。
また学長就任が決まった2014年の秋は、2016年4月から始まる、法人化後第3期(6年間)の計画を立てるタイミングでした。ここでは、学部教育の大改革を実施するための学部改組が最も大きな計画であり、これは2019年(令和元年)の工学部から理工学部への改組で実現しました。

本学は1949年に新制の国立大学になって以来70年間ずっと工学部でありましたが、理工系人材の幅を広げて、横串として全学必修の情報教育を大きく充実させた理工学部へと教育改革を行いました。

さらに情報教育に関しては、2021年度からは、数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)を全学で実施、その実績をもって2024年度中には、2022年度からスタートした第4期中期目標・計画でも謳っている応用基礎レベルの申請・認定を目指しています。おかげさまで、後述する本学の研究力の充実と広報戦略がうまく噛み合って、2023年春の本学昼間コースの一般入試(前期と後期日程合わせたもの)の倍率も、2022年度は少なくともデータがある過去20年間の中でダントツの最高倍率となり、本学の志願者総数も過去最高でした。法人化が始まった2004年度入試の際は、女子学生は約50名、道外学生は約130名であり、2022年度は女子学生は100名に達し、道外学生も270名を超え、それぞれ倍増し、入学者の状況も20年前とは様変わりしました。

私は本学が国立の工業大学としての存在感を高めていくためには、私立大学との違いを鮮明にするべく、大学院教育の充実が必須と常々考えていました。進学希望の学生諸君からも、出口の産業界・社会からも魅力ある修了生を育てる大学院とするべく、第4期中に博士前期課程への進学率50%達成を学長ビジョンで掲げました。この意図は、本学に入学し大学生となった皆さんが、本学の大学院へ進学するのが普通の状態となる、そのようないわゆる「大学院大学」としての国立の工業大学としての存在価値を高めて、本学が生き残りたいというところにあります。まさにタイミング良く文部科学省は高度情報系人材の育成に舵を切り、国立大学の情報系大学院の拡充を予算化しました。本学は5年前の理工学改組の時点からすでに全学的に情報教育を厚く行なって来ていましたので、早速初年度に申請し、採択にこぎつけることができ、情報電子工学専攻(大学院博士前期課程)に、この4月より共創情報学コース(定員15名)を新設できました。大きな予算が伴った改組は、少なくとも法人化以降では今回が初めてのことです。ぜひとも、大学院進学率50%(300人超え)の起爆剤としたいものです。

博士後期課程支援に関しては、2021年度より「次世代イノベーションを駆動する異分野融合博士人材育成支援プロジェクト」の採択を得て、情報✕専門の異分野融合人材の育成支援を行い、2023年度は前期17名、2023年度後期18名で、1年間1人当たり220万円の経済的支援と70 万円の研究支援を行うことができました。こちらも2024年度以降26年度まで、次のプログラムも採択を受けることができました。またおかげさまで、運営費交付金共通指標で博士号授与率は3年連続で最高評価を受けていて、そのようなエビデンスに基づいた実績が大変重要であると思います。

つづいて、教育とも関連する研究についてです。学長ビジョンに基づき、「確かな『世界水準』の研究力」を本学の特長とすべく研究支援に力を注いできました。2020年度より学内公募型研究費募集開始(未来創造経費)し、2022年度には4期の中期目標・計画のスタートダッシュを図るべく、内容を一新し、若手研究者支援パッケージも創設しました。2020年度より新たな年俸制を導入し、年齢や在職期間に関わらず業績に応じた職位設定、給与制度とし外部資金を獲得した場合のインセンティブも厚くしました。これにより、優れた若手教員の採用・昇進、教員の多様性も推進しています。また、2018年度より「AI 耐災害システム」を担う先端ネットワークシステムラボを重点化し、ラボに対して共創スペースを環境整備しました。本ラボからは2021年度に文部科学大臣表彰若手科学者賞(董冕雄教授)、2023年度には太田香教授も同賞を受賞しました。彼らは複数年、クラリベイト・アナリティクス「高被引用論文著者」に選出されており、「確かな研究力」の裏付けとなる量と質を担保した世界水準の論文創出に大いに貢献しています。昨年4月には本ラボをベースとして、世界TOP水準の研究を行う、コンピュータ科学センター(センター長の太田香教授を含む3人の卓越研究員も在籍)を設立し、これからの世代を担う若手研究者や博士課程の学生諸君を世界TOP水準の研究を行う環境のもとで育て始めたところです。また、昨年末には太田教授が、JSTの先端国際共同研究推進事業「次世代のためのASPIRE」の採択も得て、さらなるセンターの充実を推進しています。

また本学の「確かな研究力」の裏付けの一つとして、私は「大学ランキング」の積極的活用を行なってきました。例えば世界大学ランキングの代表的なものとして、Times Higher Education (THE)の世界大学ランキングは5年連続のランキング入りを果たし、世界で1501+位となりました。また、QSアジア大学ランキングにおいても、2年連続でランクイン(501〜550位)しました。この2つ世界の代表的大学ランキングにランクインしているのも、道内では本学と北海道大学の2大学のみであり、本学の研究力が光っています。また同窓生の頑張りとしては、技術士と一級建築士合格者数はそれぞれ国立工業系大学では全国3位と5位と好成績となっており、本学志願者などをターゲットとした本学の大学ランキング2024年版ポスターにまとめてアピールしています。

さらに、室蘭工業大学が北海道、室蘭の地に存在し続ける意義として、北海道との地域共創が強く求められています。本学では、室蘭の隣町の伊達市をフィールドとした内閣府SIP事業への採択、白糠町や白老町をフィールドとし、アイヌ文化の知恵を活用するJST共創の場事業への採択、大樹町でのインターステラテクノロジズ社と共同した低コストロケットの開発など、北海道をフィールドとして、本学の研究力を活かす社会との共創事業に力を注いでいます。また、道内の自治体や道内に拠点がある企業等で活躍する多数の同窓生の皆さんとも協力して、社会貢献につながる共創事業を推進しています。

加えて連携の観点からもう1件、触れたいと思います。昨年末に北海道、東京、九州と日本を縦断する形で位置する3つの国立の工業大学(室蘭工業大学、東京工業大学、九州工業大学)による三工業大学が、産学連携、そして理工系人材育成の推進の観点から、三工大連携を締結いたしました。東京工業大学の大岡山キャンパスで、キックオフシンポジウムを開催し、三工業大学の共通する強みである、フード&ヘルス、AI、航空・宇宙分野で3つの分科会を立ち上げて、研究紹介を行いました。今後まずは上記のテーマより、3つの工業大学の研究が協働することにより、具体化・発展して実現し、日本全体そして世界へ競争力を持って、アピールしていくことを期待しています。そして本学としては、私の学長ビジョンにも掲げている世界水準の研究力をもって、北海道というフィールドを活かしたMONO・価値づくりへの貢献を推進し、さらには3工大が連携して、日本全体のMONOづくり、価値づくり、課題解決に寄与していくことを心より期待しています。

最後になりますが、4月からは、私が学術担当理事・副学長のときから、13年間にわたり同じ執行部で、私の右腕として長らく、活躍いただいた松田先生が学長となり、本学の舵取りを行います。本学が向かう方向性は当面、私の学長時代と同じ方向性だと期待していますが、まずは新執行部が共通のベクトル・評価軸をもって、松田先生のリーダーシップのもと、本学の教育、研究、社会共創の発展、推進を進めていただきたいと思います。

私も立場はかわりますが、室蘭工業大学の応援を続けていきたいと思います。皆さま方におかれましても引き続き、室蘭工業大学を応援してくださると幸甚です。