室工大ニュース

航空宇宙機システム研究センターが名古屋大学との共同研究「液液デトネーションエンジンの燃焼試験」を実施しました

室蘭工業大学航空宇宙機システム研究センターでは、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学笠原研究室および静岡大学川崎研究室と2023年5/8-26に本学白老エンジン実験場において亜酸化窒素(N2O)およびエタノールをそれぞれ酸化剤・燃料とする液体デトネーションエンジンの燃焼試験を実施しました。15日間の実験期間中には室蘭工業大学、名古屋大学、静岡大学から総計20名程度の教職員、学生が参画し、協働で試験運用に臨みました。また日程期間中にはJAXA宇宙科学研究所観測ロケットチーム担当3名もプロジェクト進捗確認のため実験場を訪れました。
当該エンジンは2024年度にJAXA/ISAS観測ロケットで宇宙空間に打ち上げられ、世界初の液体燃料・酸化剤によるデトネーションエンジンの動作実証を目指すものです。
2022年7月のシリーズでは主として着火タイミングの確立、2022年12月のシリーズでは主として長秒時燃焼におけるC/C複合材内壁の耐熱性確認を行いましたが、これらの成果を踏まえ、今回の試験シリーズでは前半期間に3種類の燃料噴射器を用いたデトネーション発生の有無への影響調査を実施し、その後5/17からはフライト時と同じ型式のタンク・バルブを用いたBreadboard Model(BBM)試験設備を用いて必要量の燃料を正確に充填する手順の確立およびエンジンを縦置きした状態での燃焼試験を実施しました。燃料充填工程では室蘭工業大学で事前実施した透明タンクへの充填試験結果を参考にタンク上部のバルブ開度を決定し、精度よく充填量をコントロールすることができました。また、縦置き形態の燃焼試験では地面からの火炎反射や、エタノールが地面に溜まることによる後燃えなどの影響を排除する必要がありますが、室蘭工業大学の学内燃焼試験*でこれまでに培った火炎デフレクターなどのノウハウを活かし、無事に燃焼試験を終えることが出来ました。
本研究で得られた成果を元に、今年度中には実際に宇宙実証するフライトモデルの最終地上試験を白老実験場で実施予定です。

*ガスジェネレーター60秒燃焼試験(2023/3/3実施)

本研究は国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構戦略経費「デトネーションキックモーター観測ロケット軌道投入実証」および科学研究費補助金特別推進研究「自律圧縮型デトネーション推進機の物理解明:高次統合化観測ロケット宇宙飛行実証展開」の経費により実施されたものです。

デトネーション燃焼試験 (5/17実施、Run47、15秒燃焼)
BBM縦置き燃焼試験(5/25実施、Run106、3秒燃焼)
保安写真(5/25撮影、Run106終了後)
計測室内の様子(5/25撮影、Run106燃焼試験中)