
天候に左右される電気を活かす風力や太陽光発電は、天候によって発電量が変動します。北海道のように送電網の制約が大きい地域では、発電した電気を十分に送れず、一部が十分に活用されないこともあります。
水素はエネルギーを運ぶ手段になるそこで、発電した電気のうち、そのままでは十分に活用しにくいものを使って水を電気分解し、水素をつくります。水素に変えておけば、エネルギーを貯めて運ぶことができ、燃料電池で電気に、ボイラーなどで熱に変えて使うことができます。
水素吸蔵合金とは水素吸蔵合金は、水素を金属の中に取り込み、必要に応じて取り出せる材料です。高い圧力で気体のまま貯める方法とは異なり、比較的低い圧力で水素を安全に貯蔵できます。
小さな容器に多くの水素を貯められるたとえば、国内で数社から市販されている普及型のポータブル水素吸蔵合金タンクには、コーヒー缶ほどの大きさで、標準状態に換算して約 60 L の水素を貯蔵できるものがあります。タンクの内部すべてが合金ではありませんが、小さな容器で多くの水素を貯められることは大きな利点です。
高圧ガスではなく、低圧で運用できる一般的な高圧水素容器で用いられる数 10 MPa(数 100 気圧)の高圧水素ガスを必要とせず、1MPa未満の低圧で水素を貯蔵・運用できます。高圧ガス保安法の対象外となる仕様により、より安心でコンパクトな水素利用や運搬が可能になります。
再エネ由来水素を地域で使う室蘭では、風力発電などの再生可能エネルギーを使って水素をつくり、水素吸蔵合金タンクに貯蔵し、地域の中で運んで利用する取り組みが進められています。
日本初の一体型水素サプライチェーンこの取り組みは、室蘭市所有の風車由来の電力を用いた水素製造から、水素吸蔵合金タンクへの充填、配送、さらに住宅用燃料電池や水素燃焼ボイラーでの利用までを、一つの事業としてつないだ日本初の水素サプライチェーンです。
プロパンガス配送網を活かした水素配送充填した水素吸蔵合金タンクは、プロパンガスの配送トラックに混載して地域へ運ばれます。住宅では燃料電池による電気・温水供給に、小規模商業施設ではボイラーによる給湯やロードヒーティングに活用されており、水素を地域の暮らしの中で使う仕組みが実際に運用されています。
地域のエネルギーを地域で使う 再生可能エネルギーからつくった水素を地域の中で貯蔵し、運び、使えるようになれば、エネルギーを地産地消する新しい形が生まれます。天候や送電網の制約を受けやすい地域でも、エネルギーをより有効に活用できるようになります。
未来のエンジニアへ こうした未来を支える出発点は、「なぜだろう?」と思う気持ちです。その疑問を自分で考え、掘り下げていくことが研究につながります。自ら関わったものづくりが形になり、社会の中で役立っていく喜びを、ぜひ感じてほしいと思います。