研究ニュース

ペレム准教授の歩行者移動の再編について分析した論文が国際学術誌『Mobilities』に掲載されました

ペレム ジョン ガイ准教授(室蘭工業大学 大学院工学研究科 ひと文化系領域 言語科学・国際交流ユニット)による研究論文「Narrowing urban public space by patrol: how a security robot reorders underground mobilities」が、国際学術誌『Mobilities』に掲載されました。

本研究は、札幌駅前通地下歩行空間において巡回する自律型警備ロボットを対象に、ロボットの移動経路、床面照明、音声警告、走行音、カメラ運用表示などが、歩行者の移動や公共空間の使用方法をどのように変化させるかを、継続的な現地観察とフィールドワーク写真に基づいて明らかにしたものです。研究成果は、警備ロボットを単なる移動機械としてではなく、都市空間の移動・注意・監視のあり方を変化させる公共空間の管理装置として捉える必要性を示しています。

研究のポイント

  • 札幌駅前通地下歩行空間を対象に、令和6年11月から令和7年12月まで継続的な現地観察とフィールドワーク写真による調査を実施
  • 警備ロボットが通路中央付近を巡回することで、歩行者が左右へ移動してすれ違う傾向が生じ、通行可能な空間が実質的に狭くなることを確認
  • ロボットの床面照明の周囲で歩行者が減速・回避・譲歩する「ロボット中心のバブル効果」を示した
  • 歩きスマホへの音声警告、走行音、「警備中」の表示、カメラ運用表示などが、歩行者の注意や行動を調整する役割を持つことを分析
  • 充電ステーションへの帰還やクラウド型の画像・映像記録を含め、巡回ロボットがその場限りの接触を超えた監視・管理の仕組みに接続していることを指摘

研究の背景

近年、日本では労働力不足や人口構造の変化を背景に、サービス業や公共性の高い施設でロボットの導入が進んでいます。これまでロボット導入に関する研究では、利用者がロボットを受け入れるか、ロボットが安全に動作するかといった観点が多く扱われてきました。

一方で、駅、空港、地下歩行空間など、多くの人が日常的に利用する都市インフラにロボットが導入された場合、ロボットは単に「そこを移動する物体」ではありません。歩行者の進路、速度、距離感、注意、行動規範に影響を与える存在となります。

特に札幌の地下歩行空間は、冬季の積雪時にも通勤・移動・買い物などを支える重要な歩行者インフラです。そのような場所で警備ロボットが日常的に巡回することは、都市の公共空間のあり方を考えるうえで重要な事例となります。

研究の内容

本研究では、札幌駅前通地下歩行空間で巡回する警備ロボットを対象に、歩行者がロボットとすれ違う際の動き、歩行者の横方向への移動、減速や距離の取り方、ロボットの照明・音声・表示が与える影響を観察しました。

その結果、ロボットが通路中央付近を繰り返し巡回することで、歩行者が左右に移動してロボットを避ける場面が見られました。これにより、形式的には公共空間として開かれている通路であっても、実際に歩行者が自由に使える通行空間が狭まることが明らかになりました。

また、ロボットが床面に照明を投影することで、その周囲に歩行者が入り込みにくい移動領域が形成されていました。本研究ではこの現象を「ロボット中心のバブル効果」と捉え、歩行者がロボットの物理的な大きさ以上の空間を避けるように行動する点を示しました。

さらに、ロボットが発する歩きスマホへの注意喚起、走行時の音、正面に表示される「警備中」のメッセージ、カメラ運用を示す表示などは、歩行者に対してロボットを警備主体として認識させる役割を果たしていました。これらの光・音・表示は、歩行者の注意や行動を調整し、公共空間における移動のルールを自動化された形で示すものと考えられます。

加えて、ロボットは巡回後に充電ステーションへ戻り、移動中だけでなく停止・充電中にも警備インフラの一部として存在していました。画像・映像の記録やクラウド保存といった機能と合わせて考えると、警備ロボットはその場の通行整理だけでなく、公共空間における監視やデータ管理の問題にも関わる存在であることが示されました。

今後の展望

本研究は、公共空間に導入されるロボットを評価する際には、衝突回避や安全性だけでなく、歩行者の通行空間、アクセシビリティ、音環境、視覚的な圧力、プライバシー、データ管理などを総合的に検討する必要があることを示しています。

今後、駅、空港、商業施設、地下歩行空間などで警備ロボットや案内ロボットの導入がさらに進む可能性があります。そのため、ロボットが人々の移動や公共空間の使われ方にどのような影響を与えるのかを、現地観察、利用者への聞き取り、管理主体への調査、地域との比較研究などを通じて検討していくことが期待されます。

論文情報

論文名:Narrowing urban public space by patrol: how a security robot reorders underground mobilities
雑誌名:Mobilities
著者名:John-Guy Perrem
D O I:10.1080/17450101.2026.2672983
キーワード:Mobilities, public space, underground walkways, patrol robotics, surveillance, urban

用語解説

  • モビリティーズ:人や物の移動を、交通手段だけでなく、社会、空間、政治、技術、身体的経験と結び付けて考える研究分野
  • 公共空間:誰もが利用できる空間である一方、設計、管理、監視、ルール、利用者同士の行動によって、実際の使われ方が変化する空間。
  • ロボット中心のバブル効果:本研究で示された現象で、ロボットの床面照明や移動経路の周囲に、歩行者が距離を取り、減速・回避・譲歩する移動領域が形成されること。
  • 札幌駅前通地下歩行空間:札幌駅周辺と大通方面を結ぶ地下歩行空間。冬季の積雪時にも利用される、札幌中心部の重要な歩行者インフラ。

研究に関する問い合わせ

室蘭工業大学 大学院工学研究科 ひと文化系領域 言語科学・国際交流ユニット
准教授 ペレム ジョン ガイ
E-mail:jgperrem@muroran-it.ac.jp

札幌駅前通地下歩行空間を巡回する警備ロボット
床面照明によるロボット中心のバブル効果