研究ニュース

本学の研究グループの論文が国際学術誌『RSC Mechanochemistry』の表紙(Front Cover)に選出されました 

室蘭工業大学大学院工学研究科 博士後期課程2年の幾島晴輝さん(工学専攻先端環境創生工学コース)と馬渡康輝 准教授(大学院工学研究科 しくみ解明系領域化学生物工学ユニット,希土類材料研究センター)の研究グループによる研究成果が、英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)の発行する国際学術誌『RSC Mechanochemistry』に掲載され、その卓越した成果が認められて同誌のFront Cover(表紙)を飾りました。 

研究の背景

【困難だった「壊れやすい分子」のメカノケミカル合成】 
本研究グループではこれまで、環境負荷の低い次世代の合成法として、溶媒を用いず機械的な衝撃で反応を進行させる「メカノケミカル合成」の研究に注力してきました。しかし、今回対象としたポリアセチレン誘導体のような精密ならせん構造を持つ高分子は、過度な熱や圧力によってその構造が容易に崩壊してしまうという課題がありました。 

例えるなら、「叩けば割れてしまう繊細なガラス細工を、ハンマーで叩きながら作り上げる」ような極めて困難な試みです。同グループはこれまでに、固体添加剤を共存させることで、反応に必要なエネルギーを伝えつつ、分子への過剰な負荷を和らげる独自の「緩衝手法」を見出していました。今回の成果は、この先行研究で培った高度な技術基盤を応用し、さらに一歩進めて「構造の精密制御」にまで到達したものです。 

研究成果

【添加剤による「色」と「かたち」の制御】 
本研究では、このメカノケミカル合成過程において、添加するアルコールの「炭素鎖の長さ」を変化させることで、高分子のらせん構造を自在に操れることを世界で初めて明らかにしました。 

〇構造と色彩の相関
高分子鎖が形成するらせん構造の伸縮具合(分子ばねの伸び縮み)により、色の劇的な変化を実現しました。短鎖アルコールを用いた場合は、らせんが伸長した構造(cis-transoid)となり「黄色」を呈し、長鎖アルコールを用いた場合は、らせんが収縮した構造(cis-cisoid)となり「赤色」へと変化します。 

〇本手法独自の現象
この色彩制御は、従来の溶液法(液体中での反応)では再現できず、メカノケミカル合成特有の高圧・高せん断力が添加剤と高分子の親和性を極限まで高めたことで初めて可能となりました。「叩いたら壊れやすい構造を守りながら、同時に叩いて精密に作り分ける」という相反する条件を克服した画期的な成果です。 

今後の展望

本研究は、これまでメカノケミカル合成が不向きとされていた繊細な機能性高分子において、その構造をナノレベルで制御できる可能性を示しました。今後は、特定の物質や物理的刺激を色の変化で検知する高機能センサーや、環境負荷を抑えた革新的な新材料製造プロセスへの応用が期待されます。 

論文情報

掲 載 誌
RSC Mechanochemistry, 2026, 3, 38-45.  
タイトル
Helical-structure transition and color changes in aromatic polyacetylenes under mechanochemical conditions: effect of the additive-alcohol chain length  
著 者 名
Haruki Ikushima, Yasuteru Mawatari 
D O I
10.1039/d5mr00102a  

研究に関する問い合わせ

室蘭工業大学 大学院工学研究科 准教授
馬渡 康輝
E-mail:mawatari@muroran-it.ac.jp

報道に関する問い合わせ

国立大学法人室蘭工業大学総務広報課秘書広報係
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