名古屋大学、室蘭工業大学、慶應義塾大学、JAXA による研究グループで開発したデトネーションエンジンシステムがこのたび 令和6年11月14日に鹿児島県内之浦宇宙空間観測所より JAXA/ISAS 観測ロケット S520-34 号機で宇宙空間(到達高度 217km)に打ち上げられ、世界初の液体燃料・液体酸化剤を用いたデトネーションエンジンの宇宙動作実証を行いました。
令和3年7月に同グループにより達成された気体燃料・気体酸化剤を用いたデトネーションエンジンの世界初の宇宙動作実証(JAXA/ISAS観測ロケットS520-31号機)に続く快挙となりました。
当該エンジンは室蘭工業大学航空宇宙機システム研究センター白老実験場において令和4年~令和6年にかけて地上実験を繰り返してきました。最終的に令和6年2月にフライトモデルの地上試験を行った後、鹿児島に輸送され、今回のフライトを行いました。当初は令和6年8月に打ち上げの予定でしたが、宮崎県の地震の影響により射点の設備確認を要したため、11月に延期となっておりました。
デトネーションエンジンは、従来のロケットエンジンに比べてコンパクトな燃焼器でも高い燃焼効率を達成できる特長を有しています。一方でデトネーションが成立するためのストライクゾーンは一般に最適な混合比(燃料と酸化剤)付近の狭い領域に限られており、無重力環境・スピン安定状態にあるタンクから液体推進剤を供給してデトネーション動作を達成することは 令和3年の気体燃料・気体酸化剤のフライト実証に比べ難度の高い挑戦的なミッションでした。
今回液体推進剤を用いるにあたり、テレメトリーにより得られたデータは、白老実験場での度重なる実験により決定した着火タイミングや推進剤混合比の設定により液体推進剤でのデトネーション作動に成功したことを示しており、当該エンジンの実用化に向けた大きな橋頭堡となった次第です。
今後、令和9年度にフライトが予定されている長秒燃焼デトネーションエンジンシステムの構築に向け、さらに本研究グループでの実証研究を加速してゆく所存です。
本研究は国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構戦略経費「デトネーションキックモータ観測ロケット軌道投入実証」および科学研究費補助金特別推進研究「自立圧縮型デトネーション推進器の物理解明:高次結合化観測ロケット宇宙飛行実証展開」の経費により実施されたものです。
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