室蘭工業大学 クリエイティブコラボレーションセンター 徳樂清孝センター長、ケンブリッジ大学 医学部 心血管部門のXuan Li博士らの国際共同研究グループは、心筋梗塞後の心機能の低下に、微小管親和性調節キナーゼ(MARK4)による微小管結合タンパク質(MAP4)のリン酸化と、それに続く微小管の脱チロシン化が関与していることを明らかにしました。今後、MARK4を治療ターゲットとした研究が進むことで、心筋梗塞後の慢性心不全を改善する効果的な治療法が確立されることが期待されます。
これらの研究成果は、5月26日にNature誌に掲載されました(責任著者Xuan Li博士)。
本研究は、ケンブリッジ大学(イギリス)、同済医科大学(中国)、ハノーバーメディカルスクール(ドイツ)、青島大学(中国)、レスター大学(イギリス)、南方科技大学(中国)、室蘭工業大学(日本)、パリ大学(フランス)の国際共同研究として実施されました。
心筋梗塞は、成人の「早死に」の主な原因です。心筋梗塞後の心機能の低下は、全身性の健康合併症と高い死亡率を伴う慢性心不全を引き起こします。心筋梗塞後の心機能の回復を改善するには、効果的な治療戦略が必要です。
具体的には、心筋細胞の収縮力を改善する新しいクラスの薬剤が必要とされています。というのも、現在使用されている強心剤は、収縮期心不全患者の高い罹患率と死亡率に関連しているか、心不全のリスクをわずかに減少させるだけだからです。
近年、微小管の脱チロシン化が、心筋細胞の収縮性を調節するための重要なメカニズムとして浮上してきています。本研究では、微小管親和性調節キナーゼ4(MARK4)の欠損が、梗塞サイズや心臓再構築に影響を与えることなく、マウスの急性心筋梗塞後の左心室駆出率の低下を抑制することを示しました。
メカニズム的には、MARK4が微小管関連タンパク質4(MAP4)のリン酸化を促進し、チューブリンカルボキシペプチダーゼであるバソヒビン2(VASH2)の微小管へのアクセスを容易にしてαチューブリンの脱チロシン化を促すことで、心筋細胞の収縮力を制御していることが明らかになりました。 今回の結果は、心筋細胞における微小管の脱チロシン化がMARK4によって細かく調整されることで心筋の強さを調節していることを示しており、MARK4が心筋梗塞後の心機能を改善するための有望な治療ターゲットであることを示しています。
・タイトル
“MARK4 controls ischaemic heart failure through microtubule detyrosination”
・著者
Xian Yu, Xiao Chen, Mamta Amrute-Nayak, Edward Allgeyer, Aite Zhao, Hannah Chenoweth, Marc Clement, James Harrison, Christian Doreth, George Sirinakis, Thomas Krieg, Huiyu Zhou, Hongda Huang, Kiyotaka Tokuraku, Daniel St Johnston, Ziad Mallat, Xuan Li
・掲載誌
Nature
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