室蘭工業大学大学院工学研究科の倉賀野正弘助教と徳樂清孝教授および株式会社カネカ再⽣・細胞医療研究所の⻄下直希博⼠らの研究グループ ※1は、アルツハイマー病の原因と考えられるアミロイドβ(Aβ)の凝集を阻害する素材を、患者由来iPS細胞から分化させた神経細胞の培養上清を用いて迅速・低コストに評価できる新しいスクリーニング手法 HaiDapを開発しました。従来のin vitro 試験とiPS細胞ベース試験の結果のズレを埋める「中間評価系」として機能し、創薬初期段階の実効性検証を加速することが期待されます。この研究成果は、令和8年3月24日に、国際学術雑誌「Nature Communications」に掲載されました。
創薬初期では多くが試験管内(in vitro)でスクリーニングされますが、そこで選ばれた化合物が細胞・生体では効かないことが少なくありません。患者由来iPS細胞を用いる試験系は有望な一方、時間・コスト負担が大きく、多数候補の評価には不向きでした。さらに、培地添加物のアルブミンがAβ凝集を強く抑制してしまい、凝集阻害活性の正確な判定を妨げることが課題でした。
本研究では、室蘭工業大学が開発した量子ドット(QD)によるAβ凝集過程の可視化法を応用したタンパク質凝集抑制物質の微量ハイスループットスクリーニングシステム(特許第7166612号、PCT/JP2019/51077)と、株式会社カネカ 再生・細胞医療研究所のiPS細胞培養技術を組み合わせ、患者iPS細胞から分化誘導した神経細胞の培養上清中で凝集阻害物質をスクリーニングする新たなスクリーニング手法 High‑throughput screening technology for Aggregation Inhibitors of Diseased cell‑derived Aggregative Proteins (HaiDap)を開発しました。


Aβは、一般的な実験で用いられる生理的塩濃度の溶液(PBS)よりも培養上清中で早期に凝集開始し(PBS約4時間、培養上清約2時間)、細胞分泌由来の低分子やAβオリゴマーが凝集促進に寄与することを示しました。

さらに、自動化MSHTSと組み合わせて22種の植物抽出物を評価。3種(O. aristatus、 S. aromaticum、G. yesoense)はHaiDapで有効で、iPS細胞ベースの生細胞試験でもAβ凝集抑制を再現しました。
本手法は、アルツハイマー病の原因と考えられるAβに限らず、タウ、α-シヌクレイン、Serum amyloid Aなど他の凝集性タンパクの凝集可視化にも適用可能であることが確認できました。

※1 研究グループ構成員
室蘭工業大学 大学院工学研究科 化学生物工学ユニット 倉賀野正弘 助教、徳樂清孝 教授、上井幸司 准教授、博士前期課程2年 荒谷康貴 氏、室蘭工業大学 大学院工学研究科 システム情報学ユニット 渡邉真也 教授、Stefan Baar 博士、株式会社カネカ 再生・細胞医療研究所 西下直希 博士、小林明 氏、都城工業高等専門学校 物質工学科 野口太郎 教授、帯広畜産大学 グローバルアグロメディシン研究センター 渡邉謙一 准教授
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本研究はJSPS科研費 JP24K08627(K.T.)、JST 共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)JPMJPF2213(K.T.)の支援を受けました。TEM観察は文部科学省「ARIM」の支援を受け実施しました(課題番号 JPMXP1222CT0078)。
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室蘭工業大学 大学院工学研究科 教授・クリエイティブコラボレーションセンター長
徳樂 清孝
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